はじめに:外国人採用を取り巻く現状と支援制度の重要性
近年、日本の労働市場では少子高齢化による人手不足が深刻化しており、特に建設業、飲食サービス業、製造業、サービス業、卸売・小売業、宿泊業などの業種では、外国人労働者の採用が急務となっています。特定技能制度の導入や無期雇用への転換が進む中、企業や個人事業主が外国人材を受け入れる際の支援制度として、補助金や助成金の活用が注目されています。
本記事では、2025年から2026年にかけて利用可能な外国人採用に関する補助金・助成金の最新情報を、業種別の採択事例とともに詳しく解説します。これから外国人材の採用を検討している企業・個人事業主の方々にとって、有益な情報を提供いたします。
外国人採用に活用できる主な補助金・助成金一覧(2025年・2026年版)
1. 特定技能外国人受入支援事業(厚生労働省)
- 補助率・補助額:最大50万円/人
- 対象要件:特定技能外国人を新規に受け入れる中小企業
- 補助対象期間:採用から1年間
- 補助対象経費:日本語教育費、生活支援費、通訳費用など
- 補助対象者:中小企業・個人事業主
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2. 中小企業等外国人雇用支援助成金(経済産業省)
- 補助率・補助額:最大100万円/事業所
- 対象要件:外国人労働者の雇用環境整備を行う中小企業
- 補助対象期間:申請年度内
- 補助対象経費:職場環境改善費、研修費用、通訳費用など
- 補助対象者:中小企業・個人事業主
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3. 地方自治体による外国人雇用支援制度(都道府県別)
自治体 | 制度名 | 補助率・補助額 | 対象要件 | リンク |
---|---|---|---|---|
東京都 | 外国人材受入促進事業 | 最大200万円/事業所 | 外国人材の受入れを行う中小企業 | 東京都産業労働局 |
大阪府 | 外国人雇用促進助成金 | 最大150万円/事業所 | 外国人労働者の雇用環境整備を行う企業 | 大阪府商工労働部 |
愛知県 | 外国人技能実習生受入支援制度 | 最大100万円/事業所 | 技能実習生の受入れを行う企業 | 愛知県労働局 |
上記1~3の各制度:補助率・補助額・対象要件・対象経費・対象者・公式リンク
制度名 | 補助率・補助額 | 対象要件 | 補助対象期間 | 補助対象経費 | 補助対象者 | 公式リンク |
---|---|---|---|---|---|---|
特定技能外国人受入支援事業(厚生労働省) | 最大50万円/人 | 特定技能外国人を新規に受け入れる中小企業 | 採用から1年間 | 日本語教育費、生活支援費、通訳費用など | 中小企業・個人事業主 | 厚生労働省 特定技能 |
中小企業等外国人雇用支援助成金(経済産業省) | 最大100万円/事業所 | 外国人労働者の雇用環境整備を行う中小企業 | 申請年度内 | 職場環境改善費、研修費用、通訳費用など | 中小企業・個人事業主 | 経済産業省 補助金ポータル |
東京都:外国人材受入促進事業 | 最大200万円/事業所 | 外国人材の受入れを行う中小企業 | 申請年度内 | 受入準備費用、研修費用、通訳費用など | 中小企業・個人事業主 | 東京都産業労働局 |
大阪府:外国人雇用促進助成金 | 最大150万円/事業所 | 外国人労働者の雇用環境整備を行う企業 | 申請年度内 | 職場環境改善費、研修費用、通訳費用など | 中小企業・個人事業主 | 大阪府 商工労働部 |
愛知県:外国人技能実習生受入支援制度 | 最大100万円/事業所 | 技能実習生の受入れを行う企業 | 申請年度内 | 受入準備費用、研修費用、通訳費用など | 中小企業・個人事業主 | 愛知県 労働局 |
また、外国人労働者の採用に際して、特定技能や無期雇用の形態に応じて利用可能な助成金制度があります。以下に主な助成金制度とその適用条件をまとめました
目次
1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)
この助成金は、有期雇用労働者を正社員に転換した場合に支給されます。しかし、在留資格が「技能実習」や「特定技能第1号」の外国人労働者は対象外となります。一方で、「特定技能第2号」やその他の在留資格を持つ外国人労働者は、他の要件を満たせば対象となる可能性があります。
なお、正社員化コース以外の以下のコースについては、外国人労働者も対象となる場合があります。
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 社会保険適用時処遇改善コース
詳細は厚生労働省の公式資料をご確認ください。
2. 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
この助成金は、外国人労働者の就労環境を整備し、職場定着を支援することを目的としています。対象となる措置には、以下のようなものがあります。
- 雇用労務責任者の選任
- 就業規則や社内規程の多言語化
- 苦情・相談体制の整備
- 一時帰国用の休暇制度の整備
- 社内マニュアルや標識の多言語化
支給額は、賃金要件を満たす場合で最大72万円、満たさない場合で最大57万円となります。詳細は厚生労働省の公式ページをご参照ください。
3. 人材開発支援助成金
この助成金は、従業員のスキルアップや教育訓練にかかる費用を支援する制度で、外国人労働者も対象となります。中小企業の場合、経費の45%〜最大100%が助成される可能性があります。詳細は厚生労働省の公式資料をご確認ください。
4. トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
この助成金は、職業経験が少ない外国人労働者を試しに雇用する際に活用できる制度です。正社員採用を前提に、最長3か月の試用期間を設けると、1人当たり月額4万円が支給されます。詳細は厚生労働省の公式資料をご確認ください。
5. 業務改善助成金
この助成金は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる中小企業・小規模事業者に対して、設備投資などの費用を助成する制度です。外国人労働者も対象となりますが、詳細な要件や支給額については、厚生労働省の公式資料をご確認ください。
外国人労働者関連助成金一覧
助成金名 | 助成率・助成額・上限 | 対象要件 | 対象雇用形態 | 技能・訓練 | 期間 | 関連リンク |
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キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 中小企業:1人当たり57万円(派遣労働者は72万円) | 有期雇用労働者を正社員等へ転換し、6か月以上継続雇用。在留資格が「技能実習」や「特定技能第1号」の外国人労働者は対象外、在留資格が「技能実習」や「特定技能第1号」の外国人労働者は対象外。正社員化コース以外の以下のコースについては、外国人労働者も対象となる場合があります。 ・賃金規定等改定コース ・賃金規定等共通化コース ・賞与・退職金制度導入コース 社会保険適用時処遇改善コース | 有期雇用、無期雇用、派遣労働者 | 訓練要件なし | 転換後6か月以上 | 厚生労働省 |
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備コース) | 最大72万円(賃金要件満たさない場合は最大57万円) | 外国人労働者の就労環境整備(多言語化、相談体制整備等) | 全雇用形態 | 訓練要件なし | 取組完了後 | 厚生労働省 |
人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | 経費助成:45%(中小企業)、賃金助成:760円/時間(中小企業) | 雇用保険被保険者に対する職業訓練の実施 | 正社員、有期雇用、パートタイム等 | OFF-JT、OJT | 訓練実施期間中 | 厚生労働省 |
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | 月額4万円(最長3か月) | ハローワーク等の紹介により、職業経験の少ない者を試行雇用 | 有期雇用(試行雇用期間) | 訓練要件なし | 最長3か月 | 厚生労働省 |
業務改善助成金 | 補助率:最大3/4、上限100万円 | 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上のための設備投資等を実施 | 全雇用形態 | 訓練要件なし | 計画実施期間中 | 厚生労働省 |
建設業における外国人採用と支援制度の活用
(業種別の活用事例と成功ポイント)
建設業では、特定技能外国人の受入れが進んでおり、東京都の「外国人材受入促進事業」を活用して、研修費用や通訳費用の補助を受ける企業が増えています。これにより、スムーズな受入れと定着が実現されています。
建設業における外国人採用と支援制度の活用(詳細)
建設業は、全国的に深刻な人手不足に直面しており、特に若年層の確保が難しい分野です。このため、外国人材の活用が現場維持と事業拡大のカギを握っています。中でも「特定技能1号(建設分野)」に基づく受入れは年々増加しており、政府や自治体の支援制度も整備されてきました。
■ 東京都「外国人材受入促進事業」の具体的な支援内容
東京都が実施するこの事業は、外国人材の円滑な受入れと就労環境の整備を目的としています。以下の支援が受けられます:
- 日本語研修費:職場での意思疎通を円滑にするための語学研修にかかる講師謝金や教材費。
- 生活支援費用:住居の確保、銀行口座開設、医療機関の案内など、生活基盤構築のサポートにかかる経費。
- 通訳費用:現場でのコミュニケーション支援を行う通訳スタッフの人件費。
- 就労管理サポート費:労務管理体制整備に関する専門家の相談料など。
これらの経費のうち、最大200万円まで補助を受けられる点は、採用初期にコストがかかる中小企業にとって大きな後押しになります。
■ 現場での実践例:都内中堅建設会社のケーススタディ
東京都内に本社を置くある中堅建設会社では、技能実習を修了したフィリピン人作業員3名を特定技能として再雇用。受入れに際し、「外国人材受入促進事業」の助成金を活用し、日本語集中講座と現場研修の2本柱を設置しました。
- 成果:
- 現場の安全性が向上(言語ミスによる事故減少)
- 定着率が高まり、継続的なスキル習得が可能に
- 日本人社員との信頼関係が強まり、職場の一体感が向上
■ 支援制度を活用するメリットまとめ
項目 | 内容 |
---|---|
コスト削減 | 通訳や研修などの初期コストを補助金でカバー |
職場定着の強化 | 生活支援・教育体制整備により離職リスク低減 |
業務効率の向上 | 言語・文化の壁を超える体制構築によって現場の流れがスムーズに |
企業の信頼性向上 | 労働環境の整備により社会的評価もアップ |
建設業界にとって、外国人材の採用は「代替手段」ではなく、「成長戦略」の一つとなりつつあります。制度をフルに活用しながら、長期的な雇用と現場力の強化につなげていくことが、今後の競争力の源となるでしょう。
飲食サービス業での特定技能外国人の受入れと助成金活用
飲食サービス業では、経済産業省の「中小企業等外国人雇用支援助成金」を活用して、職場環境の整備や研修費用の補助を受けることで、外国人労働者の定着率向上に成功している事例があります。
製造業における外国人雇用支援制度の導入事例
製造業では、厚生労働省の「特定技能外国人受入支援事業」を活用することで、製造業の中小企業は、外国人材の受入れに伴う初期コストを軽減し、安心して雇用をスタートできます。この制度では、例えば次のような支援が可能です。
- 日本語研修の実施にかかる講師費用や教材費
- 現地からの渡航費の一部
- 通訳や生活支援スタッフの配置にかかる費用
- 地域に馴染むための生活支援や相談体制の整備費用
実際の導入事例として、関西地域の金属加工会社では、ベトナム人の特定技能人材5名を受け入れるにあたり、語学・業務研修に加えて、生活支援員を配置。研修費用の多くを補助金でまかない、結果として離職率の低下と作業効率の改善を実現しました。
このような取り組みは、技能面だけでなく、企業全体のダイバーシティや働きやすさの向上にも寄与しており、今後も多くの企業で注目される支援制度のひとつとなっています。製造業では、機械操作や品質管理など一定の専門スキルが求められるため、教育体制を整えやすくする助成の意義は大きいです。
サービス業・卸売・小売業での外国人採用と補助金活用
サービス業や小売業においても、外国人材の採用は急速に広がっています。特に接客業では語学対応が求められるため、補助金を活用した日本語教育が鍵を握ります。
東京都内のアパレルショップでは、外国人スタッフに対して、日本語や接客マナーの研修を実施し、その費用を「外国人材受入促進事業」で補填。顧客満足度の向上につながり、外国人観光客からも好評を得る結果となりました。
宿泊業における外国人材の活用と支援制度の利用
宿泊業は、インバウンド需要の増加と人材不足の両面で、特定技能外国人の受け入れが盛んな分野です。特に地方の旅館やホテルでは、補助金を活用した支援体制の整備が不可欠です。
大阪府の温泉宿では、「外国人雇用促進助成金」を活用して外国人従業員向けの社宅を整備し、通訳システムの導入も行いました。その結果、外国人従業員の職場定着率が大幅に改善され、訪日外国人観光客への対応力も強化されました。
補助金・助成金申請の流れと注意点
外国人採用に関する補助金や助成金を活用するには、計画的な準備と適切な申請手続きが不可欠です。以下のステップで進めることをおすすめします。
- 支援制度の調査・選定
- 国・自治体の補助金一覧から自社に適した制度を選びます。
- 必要書類の準備
- 申請書、雇用計画、受け入れ体制の整備資料などを用意。
- 申請の実施
- 管轄する自治体や省庁にオンラインまたは書面で提出。
- 審査・通知
- 審査に数週間〜数ヶ月かかる場合があります。
- 事業の実施と報告
- 補助対象となる事業を実施後、報告書を提出。
- 補助金の支給
注意点
- 補助金の要件に該当しない経費(例えば社内懇親会費など)を誤って計上しないようにする。
- 補助事業期間中に雇用形態の変更や解雇があると、返還対象になることも。
よくある質問(FAQ)
Q1. 特定技能外国人を雇用するだけで補助金はもらえますか?
A. いいえ、補助金を受け取るには、受入体制の整備や日本語教育の実施など、所定の条件を満たす必要があります。
Q2. 補助金と助成金の違いは何ですか?
A. 補助金は事業成果に応じた支給であり、助成金は条件を満たせば基本的に支給されるという違いがあります。
Q3. 個人事業主でも申請可能ですか?
A. はい、多くの補助金・助成金は個人事業主も対象としています。
Q4. 同時に複数の補助金を申請できますか?
A. 基本的には可能ですが、同一経費を複数制度で申請することはできません。
Q5. 補助金申請に専門家のサポートは必要ですか?
A. 初めて申請する場合は、社会保険労務士や行政書士など専門家の支援を受けると安心です。
Q6. 補助金申請はいつから可能ですか?
A. 多くは年度ごとの公募で、4月〜6月頃に募集が開始されることが多いです。
まとめ:外国人採用における補助金・助成金活用のメリットと今後の展望
外国人採用において補助金や助成金を活用することで、企業や事業主は初期コストの大幅な軽減や、職場環境の整備、従業員の定着支援など、多くのメリットを得ることができます。2025年・2026年は、特定技能制度の定着と外国人材の安定雇用が一層進む年となるでしょう。
特に、建設・飲食・製造・宿泊・小売などの業界では、補助制度を有効活用することで、国際人材の確保と企業の持続的な成長が実現可能です。制度は毎年アップデートされていくため、最新情報のキャッチアップと早期の申請準備がカギとなります。
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